8
永かった
なんとか仕事にありつきました
来月からいきます
昔を思い出す
高校のころの俺は、芸術大学か都会の大学に進学することを夢見ていた
しかし、家庭の経済事情からそのような進路をとることは不可能と判明する
その現実は当時の俺に深い遺恨を残し、やがてその逃避としてギターの練習に熱中するようになる
幸せなボンどもはせいぜいJ-POPで感動しておけ、お前らみたいなモンはロックを聴くことも弾くこともできやしねえんだからよ・・・
こんな逆恨み根性で、自分のコンプレックスをひた隠す青春時代であった
最初は怒りのままにギター(フォトジェニックのストラト)をかきむしる日々だったが、しだいにコードが鳴るようになり、そして簡単なソロフレーズならノーミスでクリアできるようになった
やがてスケールの概念を理解し、キーが分かればアドリブごっこも出来るようになった
高校文化祭のバンドで、ソロをミスり手が止まってしまうプレイヤーを見ては「キーと進行が分かってりゃペンタでフォローできるっつ~の笑」とブツブツ言っていたあたりが「イタさ」のピークだったと思う(高校のころに通過できていて本当によかった)
ギターは上達したものの、肝心の学力はガイジ寸前のままだったため大学受験は全滅
センター試験の数学が二つ合わせて50点だったのは若干トラウマである
浪人編のスタートである
田舎なので、まず最寄り駅までチャリンコで40分、そこから予備校まで電車で1時間、22時ごろに電車で戻り、駅からチャリで40分
金もらってもやりたくないスケジュールだ(サボる時もあったが)
一緒に通学していた浪人仲間がいなければ間違いなく発狂していただろう
そんなこんなで、センター試験でまあまあ高めの点が取れたので、本土のO山大学を受験する
もちろん不合格である
失意の中、後期日程に出願していた大学へ向かう
例の商店街近くの東横インに泊まり、例のマクドナルドで夕食を摂った
例のロープウェイ街道をチンタラ歩きつつ、なにが文学の街だよ・・・と悪態をついた
会場は共通講義棟の一階と覚えてゐる
着座した机に「デビルイヤーは地獄耳」なる落書きを見つける
シブい学生が居るのだなァと思ったものだ
小論文の試験であつたが、気が乗らず、小学生並みの作文をしたためた記憶が或る
合格であった
入学編である
クソみたいな新入生歓迎イベントに参加していたため、サークルに入ったのはゴールデンウィーク明けてからであった
「月曜18時より防音棟の裏で部会を開いているので、そこに来ると良い」
ビラに書かれた情報を頼りに、私は草木の生い茂る棟の裏手へ単身乗り込んだ
不機嫌そうにタバコをくゆらせる者、悪い笑みを浮かべ後輩を可愛がる男たち・・・
まさに愚連隊の集会といった様相であった
なんとなく浮いてそうな奴を探す
すると小柄で細身の体格に、フードがついたヨレヨレのネルシャツと年季の入ったカーゴでキメた銀縁メガネの男が佇んでいた
大学二年生でこれはないだろうと、いちかばちかで接近してみると
「シンニュウセイノヒト・・・デスカ」と男が囁いた
よく聞こえなかったので、「えっあの」と困惑していると
「シンニュウセイデスカボクモ」と再び早口で囁くのであった・・・
のちにその男は、なんとも言いえぬギタースタイルと奇怪な言動を武器に、死ぬほど後輩にナメられ倒しながらもなんだかんだでサークルを楽しみ尽くし、そして静かに卒業してゆく運命を辿ることになるのだが、それはまだまだ先の話・・・
見事、そこそこオラついても大丈夫そうな同期を発見した俺少年、愚連隊よろしく"集会"を開くサークル「ジャズクラブ」に無事溶け込むことができるのか!?
次回、「クレイジートレインのAメロはな、5弦の16分がミソや」
気が向き次第執筆予定 ヨロシクゥ!